上州のギザギザ岩稜線、妙義山。二日に分けて表と裏を縦走。
Day-1 2005/11/17(木)
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山名 / 山域; 表妙義 / 上州
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ルート; 妙義神社~石門~東之岳~茨尾根~相馬岳~白雲山~妙義神社
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登山形態; 単独 縦走
- 行程;9時間 移動;7時間(内アプローチ;1時間)
※時間・数値・装備及び感想は、この山行時・個人のモノです。あくまでも参考としてください。
今日の寝場所は妙義神社近くの駐車場(無料)に23:00着。
05:00起床 昨夜に買ったコンビニ弁当で腹ごしらえ。
今日は最初に舗装路のアプローチ。防寒でレインスーツを着込む。東の空がオレンジ色になってから歩き出す。駐車場からジャンボすべり台沿いに丘を越えて、後は妙義紅葉ラインの舗装路をトボトボ進む。
きんけい橋
きんけい橋手前から七曲がりの山道を一本杉まで登る。紅葉の散歩道が気持ちよい。石門登山口は、再び妙義紅葉ラインに出てから15分ほど。
石門入り口
通常の登山口は落石のため通行禁止になっていた。レインスーツを脱ぎ、先の鉄階段の迂回路から入山する。7:00に町のチャイム【野ばら】が谷に響く。
第四石門のあずまやで、オジサンが朝の光線で写真を撮られていた。『早起きおじさん がんばれ!』 自分はここから左に進み稜線を目指す。
尾根分岐
稜線に至る分岐点に[一般登山者入山禁止]のカンバンがある。一般登山者って… 今回、ロープ・クライミングギアは携帯していない。これは前回歩いた経験から。だめなら引き返す覚悟。
主稜のコル
クサリを登り大岩のV字の裂け目を抜ければ、すぐに主稜にたどり着く。コルからは裏妙義や星穴岳、そして早くも雪帽子をかぶった浅間山が見事だ。
西側の星穴岳方面はロープが張られていて入れない。以前は登れた星穴岳、現在は危険なため登山禁止になっている。星穴とは貫通した山腹の穴を天体望遠鏡に見立てた新しい名であろう。登ってみたかった。
東方向、表妙義縦走路を進む。壁のようなクサリを越えると、すぐにナイフエッジの険しいアップダウンが始まる。
中之岳
表妙義の縦走路は複雑だ。基本的に稜線を進むのだが、その稜線は幅狭く複雑に蛇行している。捲き道は突然稜線から外れるようにつけられ、マークは心細いほど少なく。行ける心算だった迷い踏み跡が本線よりしっかりしていたりする。さらに修験者向けだったのか、わざわざ危険な箇所に回り込む。
東之岳
ここまでに、すでにいくつかの小ピーク、クサリ場を越えてきた。紅葉を期待して来たが、山上の木々はすでに落葉している。いろとりどりの落ち葉は綺麗だが、これが厄介者で、薄い踏跡をかき消す。
展望は素晴しい。ここからは白雲山もよく見え、荒船山の奥には八ヶ岳連峰がやはり雪帽子姿を見せてくれる。少し早いがお茶を沸かそう。
鷹戻し
鷹戻しは、クサリ伝いに5mほど壁面を横に進んでから、エッジを乗り越え、すぐに30mほど岩壁を直下に降りる。ルンゼ状ではなくオープン面な場所なので、高度感がかなりある。足がかりはちゃんとあるので確認しながら降りてゆく。その下にもクサリ、ハシゴが連続した岩稜を東を進む。結構、長く険しい場所で修験行者気分。途中のすれ違いも困難。今日は誰もいないのでよかった。この先は若干稜線道は広く、土が多くなる。
女坂分岐
女坂と呼ばれるの分岐がある。裏妙義方面に下る道だ。この道は、先は女道となり碓氷へと続く。男坂、男道は無い。やはり修験者の山は女人禁制の名残りがある。
茨尾根のピーク
ここはブッシュより高く展望が良い。朝からの北西風もおさまった。稜線の右と左でかなり温度差がある。関東側の日差しは暑く、信州側は日陰で肌寒い。『暑いほうに合せよう。』
岩がハングして登山道にかぶさってくる。
なみのりでチューブに入る気分。青空とまっ赤な楓が印象的
相馬岳コース分岐
相馬岳コース分岐点は太目の尾根の源頭部。裏妙義がよく見える。『明日はあー行って、こう登って...』 楽しそう_まずは今日。この先、軽く下って相馬岳に登り返す。
相馬岳は表妙義の最高点。三角点とカンバンがある。妙義にしては広くなだらかな頂上だ。
今は落葉しているが、周囲はブッシュに囲まれている。展望は先の大天狗のほうが良い。
大天狗
天気が良いので360°好展望。でも、表妙義縦走路からの展望は最初から最後まで変化は少ない。
行動食のランチを済ませる。ここからいったんキレットのボトムに下って白雲山に登り返す。
すべり台
転がり落ちそうな玉石を頂き直下に抱える白雲山。転がり落ちそうな玉石を見て、花果山の石の卵を連想する。
キレットのボトムからは、すべり台状のクサリ場を上がる。20mはある。クサリを頼らず登ってみる 。妙義には人口セクションのようにホールドがボコボコ飛び出ている岩がよくある。が、そのホールドが[ポロッ]と剥れる。『怖い怖い。』
玉石の先に白雲山頂(1025m)カンバンはサビサビでやっと文字が読み取れる。
ビビリ岩
稜線の東端 遮るものは無く開放的な高台だ。榛名・赤木など上州の山はもちろん、草津や志賀までもがよく見える。
ここからは妙義神社に向かい急斜度で降りてゆく。斜めにトラバースしながら下るクサリ場は少しいやらしい。
奥ノ院
長く急な三連クサリを降りると妙義神社の奥ノ院の岩窟]がある。手入れがされてなく荒れ果てていて、神社と言うより【山婆の家】。真っ暗でちょっと怖いぞ。
大の字岩峰
【大の字岩峰】上信越HWからも見えるアレ。岩峰はクサリで登れる。麓からはちっちゃく見えるが実物は3mぐらいある。妙義神社の妙義大権現を省略し、「大」としたそうな。
妙義神社
妙義神社は『唐っぽい』きらびやかな装飾がされている。大河ドラマ【義経】では鞍馬寺としてロケに使用されたそうだ。実際は、頼朝に追われた義経は、すぐ横の碓氷峠を下り奥州に向かったと伝わる。
軽井沢
時間があるので、明日下山するかもしれない裏谷急沢沿いを見に行きながら軽井沢へ。 道路からでは下山口はよくワカラナイ。入山川の水量は少なく渉るのは大丈夫そうだ。『しかし下山後、舗装路約6kmか…』
恩賀の里から見る高岩(1080m) 夕陽を浴びて、西部劇に出てきそう。谷間の日暮れは早く、もう太陽は山裏だ。この谷の紅葉は綺麗に彩ているので明日が楽しみ。
旧軽はシーズンオフのためお店があまり開いていない。プリンスのアウトレット、食材屋さんやアウトドアメーカーを覗くが、それ以外はどうも場違いのようです。
チョット値が張るが【千ヶ滝温泉】に入ろう。さすがホテル直営の立ち寄り湯、とても清潔で広々している。人も少なく露天・低温サウナと2時間ぐらい時間を潰す。加温・加水の湯だが肌に染込んでゆくようで気持ちよい。湯から上がり、中軽のステーキ屋さんに行くが満員。お客さんが行列で待っている。
Day-2 2005/11/18(金)
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山名 / 山域; 裏妙義 / 上州
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ルート; 丁須の頭登山口~御岳~丁須の頭~烏帽子岩~谷急山~丁須の頭登山口
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登山形態; 単独 縦走
- 行程;9時間 移動;7時間40分(内アプローチ;1時間20分)
※時間・数値・装備及び感想は、この山行時・個人のモノです。 あくまでも参考としてください。
05:30起床 今日も良い天気。昨日、軽井沢で買った黒糖ベーグルに、はちみつバターをたっぷり塗って朝食。川横のため車外は結構寒い。(5:30=-5℃)
吊橋を渡り、銭洗い弁天池の右側から山に入る。麻苧ノ滝までの遊歩道には七福神の石像が点在している。新しい物だがガーデン・ドールのようでかわいらしい 。
麻苧ノ滝
意外に立派な麻苧(あさお)ノ滝。 修験者が滝に打たれたのかな?
滝の先から登山道になる。すぐに岩やクサリもあるが、なんか『チョット裏山にキノコ狩り』の気分。
産秦山
山と名付いているが、小さい石碑が無ければ尾根の一部のような場所。小さな岩壁の基部(780m)に取り付いたら、少し下ってからルンゼ源頭部の左側を登る。丁須の頭は木々に隠され、なんとなくしか確認できない 。
石祠の先、右手の白い大岩が登山道に被さってくる。クサリが2本下がっている捩じれた斜面を登ると、主稜線に出る。道はだんだんは痩せ細り、岩が増えてきた。
御岳
浅間がこんなに良く見えるのに、御嶽神社の石碑が建つ。御嶽神社列は山中に、浅間神社列は平野に多いのは、『登る御嶽、眺める浅間だから?』
昨日は拝めなかった北アルプスもうっすらとだが望める。すでにかなりの積雪だぞ。噴煙を上げる浅間山が表妙義からよりも大きく見える。 富士山同様、裾の広いお山は全貌でを見るのが素敵だ
丁須の頭
大岩の基部で国民宿舎からの道と合わさる。この大岩の北側をぐるっと回りこめば丁須の頭だ。
- 修験と登山 -
むろん海外にも山岳信仰はあるが、多くは山を崇めるにとどまる。有名なカイラス巡礼も五体投地をしながら山の周囲を巡る。これだけでも大変だと思うが、基本は【ささげる祈り】であろう。
それが日本の場合は、宗教・季節・地形なども関係するが、まず山即神。山自体を神として拝むことから始まり、さらに山に登り、自ら険しさを求めた行動をする。目的は【修行】。 [修験者は修行して徳を験す] 理論よりも実践を優先し、仏に近づくことを良しとし、神の中に入って心身を鍛えることにより、悟りや呪術的な力や得ようとする。狭い意味で【修行】=自分にPowerをつけるため。と私は思う。
だとしたら【登山】とは何でしょう? レクレーション、スポーツ、旅、モチーフ…
登山家と呼ばれる方は自ら険しさを求めた【登山】を実践する。目的や神の存在はその方個人にしかわからないが、思想・行動は【修行】に近いのではないだろうか。私自身となると、けして登山家タイプではないし、山に神を感じることは確かにあるが、それは絶対的な GODではなく、自然を対象とした尊敬や視覚・想像的なモノだし、 自ら険しさを求めるという追求・向上心もあまりない。でも、山に行く。『だって 楽しいんだもん。』
上信越HW 碓氷のトンネル前左手を注意深く見ると見える【丁】の岩。クサリが付いているが、オーバーハング、落ちたらヤバイ高さなので無理しない。
お茶を点て【丁】の岩を見る。ハンマーヘッドの根元にはクラックが入っている。何年,何十年,何百年?見当もつかないが岩質を考えるとそんな先とは思えない。 いつかはお前も[ポロッ]と落ちてしまうのか
ナイフリッジの稜線を先に進めば展望良い岩峰に出る。そこから20mほどの深く狭いルンゼを降りて行く。誰もいない山の中でこんな楽しいことをしている。
赤岩 基部
赤岩は東側基部を長く巻く片斜面を進む。所々足板がはずれ、クサリも切れているが特に問題は無い。
烏帽子岩 基部
いったん落ち葉に埋めつくされた涸沢に降り、クマザサ帯を登り返せば烏帽子岩の基部に着く。 日本各地にある烏帽子岩。ここの烏帽子岩もまさに烏帽子の形。 裏側からブッシュクライミングで登れそう。
三方境
植林された森に入れば三方境は近い。進むにつれ紅葉の具合が良くなる。茶枯れが多かった今年の山、 『やっと出会えました。』
この先、裏谷急沢の北尾根が下りられなければ、ここまで戻らなければならない。
P1
P1までは散歩道のような樹林帯。頂で今まで木に隠れていた谷急山が見えてくる。谷急山まであと6個ピークがあるらしい。この先、稜線はまた痩せ細り険しさを増す。
谷急山が近づくと、路はなだらかな尾根になる。
谷急山頂上はなだらかな広場、ぐるっと全周の展望が得られる。上州、浅間山周辺には【ダイダラボッチ】の巨人伝説が広く伝わるが、妙義をはじめとする独特の容姿の山や榛名・赤木など裾が広域にわたる山、そして時折暴れる浅間山_ 昔人々が奇妙なコトやBigなコトを巨人の仕業と考えたのに賛成。
昨日今日、いつも浅間山の展望があった。
今回最後の頂きで、浅間山が一番クリアに見えました。
下山する道は 裏谷急沢の北尾根。地図上ではちゃんとした登山道ではないようだ。『ここだね。』谷急山頂上、北側に赤テープのマーキングですぐに見つかった。枝コギ覚悟で、最初は広く真直ぐな一本尾根を下り始める。
ナイフエッジ尾根
『ここか』 裏谷急沢の北尾根ナイフエッジ部。左は岩の垂直なガケ、右はブッシュはあるが、やっぱり落ちたらただではすまないガケの綱渡り路。クサリ、ロープなどは張られていないない。 眼下の高速道路は車が〔びゅんびゅん〕走っている文明と呼ばれるものがあるのに、独り人力を駆使している自分 ~妙な気分。
ナイフエッジの先も急斜度の岩尾根。 やっと出会えた今年の紅葉が下に広がるが、あまりよそ見はできない状態。この辺は今までと岩質が異なる。硬く〔キンキン〕した岩だ。
今回、藪コギ、枝コギは無かった。この道、予想以上にマーキングがしっかりしている。 沢登りの下山路として結構人が入っているようだ 。
入山川
だいたい昨日の予想した河原に下山できた。今回は水量少なく靴を濡らさずに川を渡れる。
明賀~赤浜のどかな集落を抜ける舗装路を行く。道脇に建つケンネル小屋のおじさんが 「山のぼりかい? どこから来たんかい?」子犬が知らない人間を見て走り回っている。今日はじめて人と動物に出会った。
入牧橋
下山後の舗装路:国道18号はトラックの交通量が多いが、歩道が整備されているので、入山川の紅葉を挟んで今日歩いた裏妙義の稜線を眺めながら駐車場に向かう。
丁須の頭登山口
車に戻った。朝には無かった車が一台停まっている。『無事に下山してくださいね。』
妙義神社に車を走らせる【道の駅 みょうぎ】で昨日、目をつけた蒟蒻と下仁田葱を買う。ジャンボすべり台の丘に【妙義ふれあいプラザ】がある。 【もみじの湯(¥500)】 プリンスに負けないぐらいきれいだ。 本日は、山側が男湯。露天に浸かり少し筋肉痛の下肢を揉みながら妙義山を眺める。
コンロ(中カートリッジ*1)、ツエルトシート
15Lザック(5.5kg)
デジカメのバッテリー 寒さ対策としてポーチにミニホカロンを入れたが、1日1パック消耗した。今度はフリースケースでも造ってみましょう
表妙義・裏妙義どちらも標高1000mを僅かに超える程度の低山だが、日本三奇勝と呼ばれるギザギザ稜線は アップダウンを繰り返し幾つものピーク・難所を越えて行く修験路でした。登山道が不明瞭な箇所も多くあり、先を良く見て考えながら進まなければならない。途中に小屋も無ければ水場も無い。知名度はある妙義だが、それでも低山の難しさを実感できました。
表はフィールドアスレチック的要素が強く、裏は長いが景色、雰囲気に変化があるコース。谷急山でやっと今年の紅葉に出会えて嬉しかった。
高岩、ビリケン、鷹岩etc 西上州には岩低山がまだまだ沢山あるぞ!