3000m級の空中回廊を一筆書き縦走。
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山名/山域; 穂高岳、槍ヶ岳、大天井岳、常念岳、蝶ヶ岳/北アルプス
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ルート; 上高地~重太郎新道~穂高~大キレット~槍ヶ岳~東鎌尾根~大天井岳~常念~蝶ヶ岳~上高地
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登山形態; 単独 キャンプ 縦走
- 日程; 2005/09/28(火)~10/01(金) 3泊4日
- MAP
- 高低図
※時間・数値・装備及び感想は、この山行時・個人のモノです。 あくまでも参考としてください。
家で荷をパッキングすると、意外とコンパクトに仕上がる。今回、新調したコッヘルとコンロのおかげだ。
今度こそ天気も良さそうなので期待膨らむ。
Day-1 2005/09/29(火)
- ルート; 沢渡→上高地~重太郎新道~前穂~吊尾根~奥穂
- 行程; 行程9時間30分 [7時間40分]
- 標高差1700m、テント担ぎで登る重太郎新道
前夜は沢渡の駐車場に夜中に着き車泊。 平日なので始発バスの乗客は半分ほど。釜トンネルも広く明るくなった。
バスターミナルで登山届けを投函して河童橋を渡る。
山上は低い雲が出ているが、日を受けた穂高の稜線は穂高の名のとおり、穂先がコガネに輝っている。『今日は晴れる』自分を信じて梓川沿いを歩く。
重太郎新道は初めてのコース。平日の急登り、だれもいない。
風穴
風穴は冷気が吹き出る天然クーラー。でも、今日は冷え過ぎだ。『どこにつながっているのカナ?』苔が生す不思議な場所。
晴れてきた。前方に穂高の西尾根の岩稜壁がそびえ立つ。やがて岳沢沿いの明るい登山道、斜度は少し増す。岳沢ヒュッテに近づくと白岩の涸れた沢の中を進む。ヒュッテは登山道の対岸にある。
穂高の西尾根の裾はなだらかな明緑色。草原のように見えるそれは上高地に広がってゆく。
『ハイジが居そう。』
岳沢ヒュッテ前には開放テラスがあり気分よし。ヒュッテの方々以外はだれもいない。評判の【限定カレー】 残念ながら、急登り前なので御遠慮しよう。
テント場を抜け右折れでジグザグ道の急登が始まる。登るごとに斜度が増す。長めのハシゴを越えてカモシカの立場にたどり着く。
カモシカの立場
先の道を確認するためには、首を大きく後ろにそらさなけらばならない。登りは緩むことなく続いている。『こんなに長い急登 初めてカモ。』足元もほとんど岩帯に変わってきた。気温もぐんぐん上昇、すでにTシャツだ。
雲が飛んで大きな晴れ間が広がる。左手からアルペンな山並みが登場。森林限界も近い。素晴らしい眺望で急登も苦ではない。
ふと弱い硫黄の匂い。『焼岳から?』
岳沢パノラマ
見上げれば紀美子平付近の稜線と前穂高岳の偽ピークがはっきり見える。岩稜の灰色の壁が青天を分断する。
右手の明神岳は、ここから観ると黒いギザギザ頭のいかめしさとは対象に、岳沢に延びる裾はブリティシュグリーンのAラインが優しげな二面性を持つ。『広角レンズがいるな。』このオンボロカメラでは写しきれない展望が広がる。
岳沢パノラマからは、斜度が僅かに緩くなるが大きな岩が増えてくる。この辺で下山する方々と交差する。
雷鳥広場
今日は晴天のため雷鳥ではなく、山ヒバリがさえずりまわる。
雷鳥広場は、ベンチ状の岩床が階段状に並び、ザックを担いだまま腰掛けるのにもってこいの場所。
紀美子平前に、スラブ面に長いクサリ。今日はクサリに頼らず登れるが、『濡れた下りは滑るんだろうな』と心配する。
紀美子平
紀美子平に到着。 [ジリジリ]日差しが強い。ザックが5~6個デポされている。何人かの方々は休憩中。
重太郎新道を切り開いた今田重太郎さんは、娘の紀美子ちゃんをここで休ませ登山道の開拓にあたったという。『紀美子ちゃんは自分で登ったの? 背負われて来たの?』
Coffeeキットをサブザックに詰め、長袖を着て前穂高岳にピストン。偽ピークを左に回りこみゴツゴツした岩を登りだす。
今回の一つ目のピーク、前穂高岳の頂上に立つ。槍も、常念も、雲を巻きながらそこにある。今回の山行ルート、空中回廊がすべて見渡せる。
デポしていた人達は、みなさん途中ですれ違い降りていかれた。紀美子平から一緒に登って来た女性にお水をあげながら、自分のルートを説明する。『この見える稜線をぐるっと一周するんだ。』彼女は涸沢→穂高と巡ってきたそうだ。「今年の北アは晴れ日が少ないと山小屋の友人が言っていたわ。晴れが続くといいですね。」写真を撮ってあげる。彼女は先に下りる。
独り頂でCoffeeを点てる。奥穂高につながる吊尾根を覗き込む。『ここから降りてはいけないの!?』
紀美子平
紀美子平に戻り、吊尾根に入る。暑いのでTシャツに戻した。
最低コルまでは上高地側を大きくトラバースして行く。右には岩壁、左は上高地に向かって切れ落ちる片斜面と、注意箇所と云われる吊尾根だが、ひとり分の道幅は充分あり、すれ違いに注意すれば、問題なく最低コルへと登る。『好天ダシネ』
吊尾根のコル
ここからはまた急登り。息は切れるが。空気の希薄感はない。体調は『No problem』
ガレ場は〔カラカラ〕軽い音を立て流れやすい。 長いクサリ場を登るとヒョッコリ南稜ノ頭に出る。南稜ノ頭に出れば、岩原を緩く進んで奥穂高岳の頂に着く。
奥穂高岳は日本第3位の標高3190m。大好きなジャンダルムが目の前に鎮座する。涸沢の紅葉はまだ早い。
飛騨側からの風が強まる。頂きの風で急激に冷える。フリースとレインを着る。午後になり、雲の動きが早い。高層の秋雲と低い雲がはっきりと分かれて動く。
あいかわらず小屋に到る下りはダイビング。最後まで山荘の赤い屋根上面しか見えない。
テント泊の手続きをして、風ですっかり冷えた身体を山荘のホットミルクで暖める。最新設備をそなえる小ぎれいな山小屋。『何でも買えそう』
小屋泊まりの方々がどんどん到着する。しかしテントは10張以下だ。自分もテントを張り夕食としよう。【カレーうどんとアルファ米】唐辛子をしっかり利かせて作る。
18:00で外気は4℃ テント内は15度だった。「テントは寒くないですか?」とよく聞かれたが、上は薄長袖+フリース・下は山パンツ+フリースパンツ、シュラフは3シーズン用。今回の寝着はすべてこのSETで『少し暑いぐらい』でした。
今回から持つようにしたラジオで、明日の天気予報を聞く。[午前中は晴れ、午後は曇るでしょう] 『よし』明日の前半は難所越が続く。
Day-2 2005/09/29(水)
- ルート; ~涸沢岳~北穂高岳~大キレット~槍ヶ岳
- 行程; 行程9時間10分 [7時間]
- 前半は大キレット、難所が続く
薄暗く風もない涸沢岳をストック無しで登りはじめる。
『おはよう。』雷鳥の若鳥が[キョトン]とした顔を出す。東の常念から朝日が昇る。星が綺麗な夜明け。『今日は晴れそうだ。』
涸沢岳の頂上で明るくなった。天気は大丈夫。北穂~槍まで雲、風は無さそう。レインスーツを脱ぐ。
『いいねっ!』自称岩場好きの自分が声をだす。涸沢岳からコルへの下降 真下へ凹溝の中を下りて行く。
さらに不安定で脆い岩場のため、手・足場共に充分確認しながら加重する。数回抜けそうな岩を手にする。
一般に山としては認知度の低い[涸沢]岳だが、『標高といい 立派なピークだ』。
涸沢のコル
涸沢岳の下りほどではないが、やはりグズグズの岩場を登り北穂高 頭上の雲が消え晴れてくる。
自然の積み木のような岩があるコル。ドームの涸沢側に大岩のテラスもあるが休憩せずに先へ。
涸沢岳の下りほどではないが、やはりグズグズの岩場を登り北穂高。頭上の雲が消えてくる。
南峰からは涸沢側に下り再度、飛騨側に乗っ越して北峰に登る感じ<。
北峰の頂と同じ高さに北穂高小屋の屋根が並ぶ。日本でいちばん高いところにある山小屋(富士山を除けば)で知られている。もう皆さん出立なさったので小屋前のテラスにはだれもいない。ベンチで足を伸ばして休憩できる。
テラスから望むキレット越しの風景はいつ見ても心ときめく。淹れたての【穂高ブレンド〈¥400〉】を頂きながら逸る気持ちを抑える。
『さてと』 大キレットに下りだす。
飛騨泣き
登山者が少なく、良天候のキレット越えは渋滞とは無縁。難所と言われる箇所もあっという間に過ぎて行く。
長谷川ピーク
涸沢の面は紅葉が観られる。が、『今年の槍穂はどこも茶枯れが多いような気がするなぁ』
大キレットの底
コル底部は滑らかな稜線。センタを進めて気持ちよい。右下の本谷には紅葉と万年雪も見られる。
〔ケン・ケン・パッ〕と石帯を抜ければ南岳への急登りが待ち受ける。
南岳小屋への登り。ここで急にガスが湧き出てくる。風も出てきて、気温も一気に下がる。
小屋前は強風が吹き抜ける。飛騨側からだ。風力発電の風車も唸っている。休憩しているとレインスーツを着てもまだ寒い。汗が冷えないよう小屋に入り 【手造りドーナッツ〈¥50/2ヶ〉】を頂く。飲み物もセルフ〈¥200)で気楽だ。
小屋からは、今までとはうってかわり広い稜線をユルリと進む。
2986mピーク
何箇所かのハシゴ、岩場もある稜線だが、都度ストックを片手持ちすれば大丈夫。
中岳は逆さ扇の西を登る。取り付き部は大きな岩がゴロゴロしている。
ちょっと長目の坂を黙々と進む。
中岳
槍ヶ岳がはっきりとしてきた。時折、槍先を少し右に傾けた姿を見せてくれる。
「槍は美しい」多くの人が思うであろう。 槍ヶ岳が適度の距離に近づくと、私は『孤高』という言葉に締め付けられる。無論、【孤高の人/加藤文太郎氏】などの名だたる登山家も想うが、それ以上に槍ヶ岳は終わり無き高みを極めようとする『孤高美の山』だと想う。
槍穂はこれだけの神々しさを有しているのに、あまり山岳信仰の跡は見られない。周知、槍ヶ岳を開山したとされる【播隆上人】は僧侶であり、信仰が礎であっただろうが、それでも登頂は文政11年(1828年)、江戸末期だ。それ以前の土着した信仰痕などは見られない。 麓の明神には神武天皇の名が出てくるのにだ。昔人にはあまりにも険しい遠山だったのか、それとも風雪がすべて消し去ったのか。
大喰岳
ガスが懸かる時間が増えてくる。大喰岳の上で神奈川から来た方と霧晴れ待ち。写真を撮りながらゆっくり進まれている方だ。 大喰(オオバミ)不思議な名前の山だ。小腹がすいたので行動食をほうばる 『これか!?』
ほんの一瞬だけ、槍が姿を現す 2人とも嬉しい。飛騨乗越の向こうには山荘へ登る緩めのジグザグ坂も見える。
ここも平日なのに、山荘泊まりの方は多い。でも、テント場を抜けてきたが、まだ1張りしか無かった。自分もテントを張る。槍の肩にあるこのテント場は、日本一高所にあるテント場。 今日の張り場所は自由選択のため、風裏、平面のGood-Pojiを得られる。
明日は地図上では長丁場なので、今日中に槍ヶ岳を登りたい。サブザックで小屋前、ガスが切れるのを待つ。
『まだだめ~!』 ガスの切れ間に速攻したが間に合わなかった。 途中で霧に巻かれ始める。飛騨からの雲はどんどん厚くなる。 槍先からはミルキーな物しか見えない。下り専用のハシゴを降りる 。
水を買い、テントに戻り夕食。『やっぱりコルは味付き系だね。』 ラジオを聴きながら、ひとり納得し【まぜご飯】の夕食を済ませる。
ストックの先端ゴムを何処かで紛失したのでエイドキットで治療する。 18:00には眠っていた 。
Day-3 2005/09/30 (木)
- ルート; 槍ヶ岳~東鎌尾根~大天井岳~常念小屋
- 行程; 行程9時間30分 [7時間40分]
- 昇降は少ないが地図時間では長丁場
1:00 夢で起きる [握った岩が外れる] [片斜面で足元のガレが急に流れる] [急下降中につまづき、前に放り出される]
テントのファスナーを少し開ける。僅かに風があるが満天の星空が静かに広がる。『大丈夫。昨日の難所だってあんなに余裕があったんだ。』
4:00起床 今日は長いので早立の予定だったが、下弦の月光、槍は大きな三角錐のシルエット。しらみだす東の雲海_ 『登らなければ。』 早々にパワーバーをコーヒーで流し込み、テントを撤収する。
ヘッドランプを点け、まだ誰もいないであろう槍に向かう。
狭いルンゼ内 槍に抱かれる。昨日、予習してあるので暗闇でも手がけ・足がけを迷わない。最後のハシゴを下から見上げる。『槍先がつけた天の切れ目か_』 星は去り、薄い月だけが残輝している。
日ノ出前 だれもいない槍の先 動く物は何も無い。無風。大気すらとまっている。恐ろしいほどの静寂。東・西・北3つの鎌尾根の切っ先と、少し太目の穂高に続く南の稜線が一点に集まる場所。螺旋の旋律を聴く。『このとき、この場所、この気持ち』こころに刻む。
2人目、3人目の方が登ってこられた。降下中、昨日の神奈川の方とすれ違う。『いい写真が撮れますよ』と教えてあげれば嬉しい笑顔がかえってくる。
槍岳山荘
山荘前で荷物を整理していると、大勢の方々が繰り出してきてきた。日ノ出だ。手を止め何となく一緒に御来光。陽が登り切り荷造り完了。東鎌尾根(喜作新道)を下りだす。
太陽は駆け足で昇る。鎌の最初はナイフエッジ。眩しい日の光を浴び続ける。しだいに槍沢側の片斜面だ。
槍から15分ほどで殺生小屋の真上。団体さんが登りだすのが見える。
昨日ラジオで聞いた【Go West/Pet Shop Boys】が頭の中で♪エンドレス状態 独りで行進♪ (方位はEastに向かっているのだが、西岳と輝きに向っているから良いでしょう)
『この道は晴れた登り向きですね~』 予定より1時間近く遅れているのに、振り向けば槍があるためナカナカ進めない。 ヒュッテ大槍から石より土が多くなり周りの植物の背も高くなる。
水俣乗越の手前 【窓】と呼ばれる場所、長いハシゴ登りの後、下りは丸木段を立ったまま行くが、所々に霜が付いているので慎重になる 。
水俣乗越
水俣乗越で休憩していると、これから東鎌尾根に向かう方々が結構やって来る。西岳小屋を出立さられて来た方々だ。ここからストックを使う。
西岳への登り、朝は日陰のため薄暗く陰な雰囲気の急登。 気温が下がる。ストックは西岳ヒュッテからで良かった。
木ハシゴを登り稜線に出るといきなり眩しい陽光の世界。西岳小屋の屋根が[キラキラ]している 。
ヒュッテ前で仲よいご夫婦がお食事中。写真を撮ってあげたお礼にリンゴを いただく。久しぶりの新鮮な食べ物、とてもジューシー。
同じ水俣乗越から登てこられたお兄さんも到着 。「今日は槍から常念 明日は上高地に下山の予定」と言う。私と同じコース。この長丁場を解かってらっしゃる。昨日、槍のテント場で1番張りだった方だ。
西岳の頂上に行く道もあったが、ピストンコースのためパス。西岳の東側をトラバースし喜作新道を進む。
~喜作新道~
空中回廊 槍穂の稜線は岩稜のストイックな面が楽しかったが、この喜作新道は、まったく違う楽しさを見せてくれる。 ちょっと広目の稜線は秋だというのに植物も豊か、紅葉も進んでいる。天候にも恵まれたので、まさに桃源郷。ここも空中回廊に相応しい。
しかし、右手・回廊の反対側には深い二ノ俣、一ノ俣の谷を挟み常念平が見える。『まだまだ長いぞ。』
ビックリ平
『オテンショウ イイナダヨ ヨクゾナズケタリ。』ビックリ平で荷を背負ったまま座り、大天井岳を眺めつぶやく。 反対側から女性が登られてきた 燕山荘から来たと言う。「今朝、空を見て嬉しくて泣きそうでした。」『うん、うん オイラはナイタヨ。』
ビックリ平からは森に入る。道上に架かる枝に何度かザックの頭をこする
大天井ヒュッテで休憩していると「同じコースだ」というお兄さんが到着。 『この方、健脚だな~』感心する。お兄さんは昨日、槍沢から登って来たそうだ。 次に小屋に着かれたのが大天井側を下りてこられた埼玉の【プロカメラマン】凄い荷物。カメラ機材を含め20㎏はあるらしい。作品のポストカードを見せてもらう。どれも幻想的な北アルプスの四季の瞬間だ。この荷を担ぎ、冬の北アルプスに入りシャッターチャンスを待ち続ける。一瞬を捕らえるために 『…そして? 何のため?』
登りに備えTシャツになる。 大天井岳はヒュッテから見ると砂礫山のようだが、裏面に回ると大岩がゴロゴロしている。日差しが一段と強くなる。
大天荘にデポして大天井岳を登るつもりでいたが、考え直して荷を背負ったまま頂上に向かう。 遅れも取り戻したので頂上でランチとしよう。
大天井岳の頂上からの眺望も素晴らしい。信州側には雲があるが、上から見る表銀座の尾根や裏銀座の山々、北アルプスの名山がごろごろ見て取れる。
あの同じコースのお兄さんはデポしてこられた。「愛知から車で来た。」と言う。その後、燕山荘に向かうグループの方々、前回大キレットで滑落した方を交えて山談議で盛り上がる。愛知のお兄さんは先に常念に向かう。自分はCoffeeを点て行動食で山見を満喫する
東天井岳 小屋跡
岳沢から北方向に進んできた今回の空中回廊も、ここで大きくUターン。進行方向が南方向に変り、同時に登山道の雰囲気もずいぶん優しくなる。なだらかな丘状、頂角の広い三角断面の稜線道、低木帯が山頂から見えうる山裾まで広大に群生している。 緩やかな斜面を下り、東天井岳の西を巻く。途中に小屋跡の石組みがある。その先は、いったん南斜面に回り込む。山頂を行くコースは廃道のようだ 。
横通岳 巻き上
低木帯の中は露根があり、土も流れてしまった、やや荒れた道だ。
名前のとうり、横通岳はトラバースして行く。石から岩に変わる登り道 、『だいぶ地図上の予定時間より早いぞ。』 ガスが出だし常念も姿を隠す。槍穂の展望もかき消された。横通岳を巻いた最上部からは下るのみ 紅葉と立ち枯れの白木が目立つ森に突入しても、どんどん下りる。急に開けた広場に出たら、そこが常念平。
先に着いた愛知のお兄さんはもうテントを張り終わっている。2人とも後半が予想外に早く進めたので余裕。ここのテント場は斜地にあるため、少しアンジュレーションがある。 自分もテント張りを早々に済ませ、小屋に向かう。
今日は、おでん〈¥800〉をつまみに缶ビール〈¥500〉をいただく。『晴れ続きの山行にカンパイ!』 北海道から来られた小屋泊のグループの方々からの質問 「ニホンジン?」ちゃんと説明しながら大笑い。
テント場に戻ると愛知のお兄さんが「今夜は寒いかな?」『標高が下がったから大丈夫じゃないですか』 今日のテントは2人だけ。ラジオによると昨夜は今年一番の冷え込みだった。実際は、昨夜の槍肩より日夜の温度差があったようで露がテントを濡らし、それが夜明け前に〔バリバリ〕に凍った。『ヤマデタカヲククッテハイケナイ』テントのベンチレーションを開けておいてよかった。
テント内で【和風ぞうすい】を食べる。1Pでは物足りずにもう1P食べる。『今日は結構歩いたものね。』 怖い夢も見ず熟睡する。
Day-4 2005/10/01(金)
- ルート; ~常念岳~蝶ヶ岳~長堀尾根~上高地→沢渡
- 行程; 行程9時間10分+スケッチ3時間 [7時間45分]
- いつもとなりは槍穂の大パノラマ
3:00起床 南東にオリオン、西には白鳥、その間を天の川が結んでいる。『今日も良い天気だぞッ』 食事を済ませ、5:30に頂上で日ノ出の積もりで撤収を始める。凍ったテントは拭き払ってから撤収だ。
ザックを背負い、小屋前に向かう。愛知のお兄さんのテント、明かりは灯っているが、まだ出立ではないようだ。小屋泊まりの何名かが常念に向かう。小屋前の明かりで靴紐を結び、スパッツを装着し後を追う。
常念岳への登りは、朝一の運動にしては結構急だ。先行のヘッドランプの明かりを追っていると、つい登山道を外れ直登をしてしまう。 『スイマセン』 大きめの石がゴロゴロで浮石・岩が多くある。中腹では尾根裏で日ノ出の様子がはっきり見えない。『間に合うか?』不安になりスピードアップ。先行の方々の最後尾につく。
常念岳山頂着ですぐに日ノ出。先行の方々を含め7~8名、皆さん山好きだ。静かにモルゲンロートを迎える。
日が昇りきると青色中心の世界
信州側は雲海に浮かぶ遠方の山
槍穂側は山、そして山
360°の大パノラマ
Coffeeを点て、紅→コガネ→蒼と刻々と変化する山々を拝む。形容できるコトバは無い 。
年配の方が「これで九十九山目、残るはあの鹿島槍!」と顔を向ける。みんなで百名山の達成を祈願。このオジイチャン、一緒に登られた奥さんによると、御歳68齢! お仕事リタイヤ後、8年間でここまで登ったと言う。しかも頂狙いではなく、立寄れる山にも足を向けている。今日も蝶ヶ岳まで回るそうだ。
ここから離れられない気持ちに踏ん切りをつけて、みんな自分の道を歩みだす。
『行こう』 先には、なだらかな蝶ヶ岳の回廊が見える。 しかし、あそこにたどり着くには何箇所かのアップダウンがある。 常念~蝶ヶ岳間の最低鞍へと下りだす。クサリ場などは無いが大岩の中の急勾配だ。
06:40~07:00 最低鞍手前の一旦斜度が緩む尾根の風裏で、先ほどの百名山ご夫婦が朝食をしている。 コーヒーと小屋の【みそパン】をご馳走してくれる。色々お話をする。『ほんとうにお山が好きなんだ』と感じる。 来月には百山目の鹿島槍を登るそうだ。『これもアリ』 愛知のお兄さんも降りてこられた。常念を登りながら日の出を観られたそうだ。
最低鞍
一つ目のピークの登りは少し急な登り返し。
一つ目のピーク
森林限界を出たり入ったりになってきた。展望は減るが半紅葉した美しい森だ。
二つ目のピーク
二つめのピークもグッと登り、信州側を緩く下る。足下に森がある。池塘だ。突然なのでビックリする。この辺は池塘の痕跡やぬかるみ跡が多く見受けられる。雨後の登山道は泥が出そうだ。
意外と登山者とすれ違う。今日の挨拶はきまっている 『いい天気でよかったですね!』みんな顔がほころぶ。
蝶槍
常念から3つ目のピークが蝶槍。登りだすとすぐに視界が開け、また槍穂のパノラマで足が止まりがちになる。 蝶槍の頂は大岩がゴロッとしているが、その先、蝶ヶ岳までは緩やかに、そして複雑にいくつもの丘が重なり合う空中回廊。 横尾分岐の先の二重山稜もよく解かる。梓ノ谷からの風が出てくる。
横尾分岐
乾いた冷たい南西風に変わり、高層には薄雲が出る。 『自分がフリーズドライになっちゃう』 唇が乾く。 少し強めの風が吹くとケルンが泣く。
今回の山行も終りが近い。『其処に行けば~ どんな夢も~ 叶うと言うよ~♪』
蝶ヶ岳ヒュッテ着。今日は上高地の終バスに間に合えばいい。時間はたっぷりある。
まずは腹ごしらえ。予備食の【米麺】を煮る。パクチーがいい香りだ。
愛知のお兄さんが到着する。『下山後、運転気をつけてくださいね。』 百名山のご夫婦も到着。『オジイチャン足速いです~次は200名山ですね。がんばってください!』 みなさんここでお別れだ。自分は風裏を陣取り、山を見ながら米麺のスープをすする。
写真・画そして詩、今まで数多くの芸術家がモチーフにした槍穂の稜線。 あやかってスケッチする。上空に薄雲がかかり彩色が難しい。
泊る小屋に昼着し、ベンチで酒盛りを始めるおじさん達。『これもよい。』 自分は荷物をまとめる。ずいぶん長居した。
今回、最後のピーク 蝶ヶ岳の頂上は小屋裏からすぐそこだ。 頂上で、もう一度、歩いた山々に目を向ける。空中回廊を下りはじめる時が来た。
妖精の池
下りだしてすぐ左側にある妖精の池(池塘)。ここから徳沢まで、森中のため展望が無くなる長堀尾根を下ることになる。
長堀山
長堀山からの道は、溝状に深く削れたり、浮石、露根、倒木、ショートカットなどで、かなり荒れている。段差な部分も少なくない。 何人かの登りの方とすれ違う。徳沢から4時間半 登りは大変そう。
2162m地点
ここからは急下り箇所が増えてくる。森床もクマザサが多くなる 淡々と下る。
さすがに少し飽きた頃、前方下、木々の合間に白く広い梓川の河原が確認できる。『もう少しだ。』
徳沢
徳沢に降りた。もう、山は無い。楽なような、つまらないような…
徳沢園は小説【氷壁/著;井上靖】の舞台となった宿。土曜日なので、この時間でも槍や涸沢を目指す人や下山した人々でにぎわっている。名物の姫林檎をかじる。
平地はストックを交互に振りウォーキングスピードで行く
明神
梓川沿いの道はいつでも多くの人々が往来している。明神からは、少し遠まわりだが【上高地自然探勝路】をたどる。
明神橋;先ほどまで目の高さに見えていた明神岳を今は見上げながら橋を渡る。 上高地の猟師だった嘉門次はW.Westonのガイドを務める。北アルプス黎明期の名案内人と呼ばれ、一生を山で生きた。 明神参道脇には今でも嘉門次小屋が建つ。
明神池;〈拝観¥300〉 清らかな水でニジマスやカモが遊び、池底の【イチョウバイカモ】が鮮やかな緑色で揺らめく。
上高地=神降地(神河内) こんな山の中なのに海神(ワダツミ)系が御祭神。海・陸交通の守り神だ。 『昔人も、太古の北アルプスが海だった事を知っていたのかナ』 想像しながら自然の庭園を観る。
□水平道 15分
上高地のBTに向かう。河童橋から岳沢を振り返る。3日前に登りはじめた山谷は、その時と同じように大きく拡がっている。
明日は上田の【無言館】を観に行くので今夜はどこかで車泊りの予定。
まずは♨_沢渡も湯処だが、どこも混んでいそうなので、少し寄り道して山から綺麗に見えた乗鞍に行き、【乗鞍 湯 けむり館〈¥800)】へ。空いている。白湯の広々浴槽で身体をおもいっきり延ばして丁寧にストレッチ。 次は、お腹が「おいしいラーメンが食いたいよ~」と言うので、松本市街の【濃厚みそラーメンと餃子】 21:00頃 寝場所は安曇野近くの【道の駅・池田ハーブセンター】にした。
テント、3シーズンシュラフ
コンロ(中カートリッジ*1)
60Lザック+Wストック=(16kg)