北アルプスから直接海に向かう後立山縦走路。扇沢~親不知の予定だったが天候不良(という天気予報)のため唐松岳までで断念。
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山名/山域; 鹿島槍ヶ岳、五竜岳、唐松岳/北アルプス 後立山南部
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ルート; 扇沢~鹿島槍~五竜岳~唐松岳~八方尾根
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登山形態; 単独 キャンプ 縦走
- 日程; 2005/09/11(日)~13(火) 2泊3日
- MAP
- 高低図
※時間・数値・装備及び感想は、この山行時・個人のモノです。 あくまでも参考としてください。
前々日にバスを予約するが、一変して天気予報が悪くなる。やっぱり夜行バスは苦手 眠れない。
Day-1 2005/09/11(日)
- ルート; 扇沢~爺ヶ岳~冷池テント場
- 行程; 行程7時間25分 [5時間50分]
扇沢
バスは扇沢BTに予定より早く着いた。まだ真っ暗。
雨は降っていないが路面は濡れている。立山側から黒雲が流れて来る。扇沢の駐車場はガラガラだ。
途中でレインスーツを着込むのも面倒なので、ヤキソバパンをかじりながら独り雨支度。柏原新道登山口への舗装路を戻り始める。
柏原新道登山口
薄明るくなってきた。こちらの駐車スペースの方が込んでいる。登山口で登山届けを投函する。
モミジ坂は栂の森。ジグザグの登山道を登り始める。
CATVアンテナ
テント泊+6日分なので荷は重いが、よく整備された柏原新道は登りやすい。
登山道の左脇にケーブルTVのアンテナがある。
ケルン
ケルンのあたりから景色が変わってくる。左手の山々が荒々しくなり、正面の稜線にはポツンと種池山荘が見えてくる。
今日は日曜日 天候も悪いので下山してくる方が多い。
石畳みの始まり
この辺から平板な石畳の登りになるが、斜度は緩くなるので、濡れた岩上でのスリップに気をつければ登りやすい。
水平道 始まり
長い石畳の登りが終わると、さらに斜度が緩くなる。
崩落場
小さな崩落箇所を横断。
ここを過ぎれば種池山荘も近い。
柏原新道は斜度もなく、木や石が階段状に積んであり、崩れ止めや排水路、急な箇所には鉄階段など大変よく整備されている。保守管理をされている方々 『ご苦労様です。』
種池山荘
小屋周りの草原には沢山の【コバイケソウ】が、霧の中、幽霊のように佇み種子をつけている。今年の夏は【コバイケソウ】が大開花したようだ。
ガスが濃くなり遠方の視界は無い。稜線に出たため風が強くなり、一気に体感温度が下がる。
休憩して山荘を後にする。低木帯を抜け左に折れてから、爺ヶ岳へのガレた登り入ると、登山道に雷鳥の親子がいる。追いかけている気は無いが、しばし一緒の登山を楽しむ。
爺ヶ岳 南峰
とりあえず南峰に上がるが、キリで展望は無い。小雨も振り出す。
爺ヶ岳 中峰
黒部側につけられた登山道。中峰頂への分岐点で霧の切れ間を待つ。下のほうに種池山荘、先の冷池山荘あたりまでは見えるが、鹿島槍はなかなか姿を見せてくれない。
越中側から雲がどんどん湧き上がる 風雨も強くなったのであきらめて先に進む。
爺ヶ岳 北峰
北峰は黒部側をトラバース。
雷音も数回轟く中、ハイマツ帯を下る。見えていた小屋までの道が長く感じる。
赤岩尾根分岐
赤茶のガレ場を下りきり、シラビソ林の中を登り返せば山荘がある。すでにドシャ降りに強風だ。
冷池山荘
冷池山荘(ツベタイケ)に着く。顔と手がだいぶ濡れて、ほんとにツベタイ。
テント泊の手続きをして改築された山荘で一息つく。
テント場までは山荘からさらに10分ほど登る。
冷池テント場
大雨と風の中でテントを設営する。荷物をテント内に入れるのに一苦労だ。シュラフに包まり寝る。
うとうとから目覚めるとテント内に浸水。
強風でテントがばたついてシームテープが剥がれてしまった箇所がある。『チキショウ』
持ち合わせのガムテで応急処置する。シュラフは濡れていないが床はすでに濡れてしまった。
16:30頃雨がやんだ。風は少しある。富山側の雲も晴れ立山連峰がよく見える。テント内を整理する。
夕食を済ませ18:00に寝るが、湿ったテント内はいやな感じ 。
Day-2 2005/09/12(月)
- ルート; 冷池テント場~鹿島槍ガ岳~五竜岳~五竜山荘
- 行程; 9時間40分(移動時間7時間45分)
冷池テント場
0:00頃、強風で目覚める。夜空は星だらけ。今日のいい天気に思いをはせ、また寝る。
3:40起床 強い風は収まった。朝食を済ませ4:00から開いている小屋に下りて水を補給する。野営撤収するが、濡れたテントに小粒の砂礫が絡み処理に手間取る。
星が綺麗な夜明け『今日は晴れそうだ』
暗がりの中、ヘッドランプ頼りのナイトトレールで鹿島槍を目指す。じきに山の新しい朝が来る。
布引岳
布引岳頂上からは鹿島槍ガ岳の双耳峰が美しい。他もすばらしい展望だ。
布引岳からは鹿島槍ガ岳南峰へのザレを登る。 濡れた荷が昨日より重い。小休止を交えゆっくり歩む。
鹿島槍ヶ岳 南峰
鹿島槍ヶ岳 南峰吊尾根。頂上には人も少ない。静かに360°のパノラマを楽しめる。北峰への吊尾根に入るためストックを収める。
いきなり岩場の急下降、続いて高度感あるナイフエッジ。展望も申し分ない。軽荷で登ってみたいトコロだ。
鹿島槍ヶ岳 北峰
稜線登山道から少し外れた北峰へは分岐点に荷をデポしてピストン。
北峰からは足下のカクネ里もよく見えた。分岐点に戻り荷物を背負い、八峰キレットの底(2518m)に落ちて行く。
ここの下りは濡れていると滑りやすい。スラブな岩が濡れた大理石の床のようにスリッピーで先のキレットキレット核心部と言われている場所より注意が必要でした。
[小屋まで20分]の看板からキレット核心部。高度感や危険度は写真には写らない。しっかりとしたクサリとハシゴで整備されているため、渋滞さえしなければ問題ない。
キレット小屋
キレット核心部を抜けたら小屋までほとんど垂直に降りる。凄い場所に小屋があるもんだと感心する。『どうやって物資を運ぶのかしら?』
小屋で休憩して五竜岳に向かう。まだまだ岩場の稜線が続く。
口ノ沢のコル
鹿島槍と五竜間の最低鞍部。
五竜が近づき、どんどん大きくなった。
五竜岳は唐松側からがBest」と言う人もいるがここからの五竜も 『ナカナカのものだゾ。』
北尾根ノ頭
後ろの鹿島槍、左手には立山連峰、前には五竜が望め休憩に良い場所。
五竜岳の前には【G】と呼ばれる石峰が立ちはだかっている。 その先、五竜岳主峰への急登りも確認できる。
赤坂のガレ場を登り続ける。息が切れる。
G5
クサリ部を登ったG5の狭い岩のスペースで、のんびりトカゲ。この先も複雑にアップダウンがある岩場のようだ。『ワクワク』 日は高くなり岩肌はすっかりドライだ。
G4
G4から短いやせ尾根を抜け、五竜岳主峰に取りつく。急登り。バリバリに割れた砕石のガレ場は登りづらい。重力が荷の存在を強調する。『キツイぞ。』 高度計の数値が50m減るごとに立ち休みを取りながら進む。
五竜岳
頂に立つのが少し遅かった。ガスがとり巻く。少し離れた三角点からも何も見えない。
体力があれば唐松までとの甘い考えもあったが、すでにその気はすっかりなくなった。手前のピークを折れて霧靄の中、G2~G0各基部を捲きくながら、ダラダラと五竜山荘に下る。
五竜山荘
山荘で手続きをしてテントを張る。 今日のテント場は計6張。 しばらく荷物を入れずに昨日の濡れ物を乾かす。
ここのテント場は平らで適度なスペースが段々畑状 山荘と共に好感が持てる。
テント内も乾いたので荷を入れ夕食を食べる 『うまい!』
山荘で19:00前の天気予報をcheck。[明日は晴れるますが、その後3日間は台風崩れの低気圧が日本海に入るため荒れ模様でしょう] 『あらあら、どうしましょう』 とりあえず寝る。
夜中に風が強くなる。越中側からの強風だ。昨夜よりテントが歪む。ファスナーを開け外を探る。幸い雨は降っていないが濃霧だ。昨夜の水漏れ補修箇所を確認する。
Day-3 2005/09/13(火)
- ルート; 五竜山荘~唐松岳~八方尾根→八方
- 行程; 6時間40分(移動時間5時間)
五竜山荘
3:00 テントのバタツキ音で目覚める。結局、朝になっても強風と濃霧の状態が続いている。『この状態が続くと今日は天狗平までしか進めない… その先も天候が悪いと楽しくないなぁ』 朝食をしながら思案中。テント内で待機の間にもう1食ヤケ食いして、また寝る。
6:00 天候変わらず テントから山荘も見えない 取りあえずテントを撤収して山荘で待機する。強風だが昨日のように濡れていないためテント畳みはスムーズ
待ちきれない数パーティは白いスープの中を五竜岳に向いだす。風は強いが白いモノは無くならない。やはり山荘で待機している地元のおじさん・おばさんのグループに交ぜてもらい話し込む。「あと2、3時間もすれば今日は晴れるさ。」とおじさんが笑いとばす。地元の方々の話なので信じる。おばさんからは雪山トレッキングなどの話を聞きもりあがる。
7:00 信州側には晴れ間も見えてきたが基本的状態は変わらず。
『今回は白馬~親不知は断念しよう。』 決定する。下山は八方尾根とする。地元のおじさんの天気予報に期待。
山荘に貼ってある時刻表で電車の時間を確認。すでに、待機しているのは自分と地元のおじさん・おばさんのグループだけだ。
ルートの確認をして時間を逆算する。出立は8:00だ
地元のおじさん・おばさんのグループに別れを告げ出立。
風がかなり強い。レインスーツが煽られる。
霧が濃いので雷鳥が現れて姿に似合わない泣き声をあげる。ここでも親子連れだ。
白岳を越えるとガスが少し晴れてくる。
大黒岳
小ピークを越え大黒岳に続く道は黒部側と信州側を行き来する稜線を行く。
黒部側は風が吹きつけ歩いていても少し寒い位なのに、信州側の森に入ると無風で蒸し暑い。後立山連峰の非対称性を身をもって感じる。大黒岳から少し下り、ガレ場場の登りが始まる。黙々と登ると奇岩の尾根に出た。
【後立山連峰の非対称稜線】
西の越中側はなだらかな斜面に低木帯、東の信州側は崩落のガケ状態となり、僅かなスペースに所々小さな緑を形成している。冬、日本海からの雪と風が゚主に信州側に雪庇を発達させ、春、さらに日照による解雪の差が東西で異なる侵食を繰りかえしたために成した地形であろうか。
奇岩峰
岩場の牛首に取り付く この先の唐松岳頂上小屋まで急な岩場が続く。
岩場よりも足元の崩落帯のガレが崩れやすく不安定
この登りの前に[ストックを収めて]の看板がある。面倒がらずに指示従った方が良いでしょう
強風に負けないように岩場を登る。ガスに隠れて上部は見えない。
唐松岳頂上小屋
小屋に着いても相変わらずのガスと強風。小屋でコーヒー〈¥500〉を頂き、情報を集めながら低雲が去るのを待つ。
今年、崩落事故のあった大雪渓も8月14日から通行可能の案内がある。
風のためにすぐに冷めてしまったコーヒーを飲みながら行動食を取っていると、白馬側から来た方が「真っ白の中マーキングだけ見ながら来たよ」と笑う。そうこうしている内に低雲が切れだして青空が見え始めた。五竜、唐松の山々が姿を現す。『五竜山荘にいた地元のおじさんを信じて良かった!』
唐松岳
強風と時折雲かかるも展望を独り占め。やっと点いたタバコがうまい。
五竜岳はキレット側から登っている時より、どっしりした姿を見せてくれる。立山連峰は深い黒部渓谷を挟み近くて遠く連なり、白馬鑓は槍先を白く輝かせ、すぐ横では不帰ノ嶮(カエラズノケン)が怪しく誘う。
その不帰ノ嶮側からご夫婦が上がってこられた。「晴れて良かったですね。」まったくそのとうり。重たい荷、大雨、濃霧に強風、すべて報われる。小屋まで軽い足取りで駆け戻る。
唐松岳頂上小屋
信州側は暑いだろうからレインスーツの下に着ていたフリースを脱ぐ。ストックも出す。唐松岳頂上小屋からは下りなので荷物の重さを感じない。クサリをすぎた広場(2554m)で三脚を立て写真を撮っているお兄さんが言う。「今日は八方池からここまで霧で何も写せなかった。ここで晴れてよかった。」わかりますその気持ち。
予想以上に暑い。お兄さんと話しながらTシャツになる。
丸山ケルン
丸山ケルンの風裏で八方を登って来られたのであろう、品の良い女性がお弁当を食べてらっしゃる。「私はここまでで満足ですよ」『いえいえたいしたものですよ』
下っていると、登ってくる方々に「小屋まであとどの位ですか?」 「ケルンまで何分ぐらいですか」とよく聞かれる。一瞬返答に詰まってしまう。自分自身が登るタイムならすぐに見当がつくのだが、質問された方々(体力・経験・装備は人さまざま)が登るとどの位かかるのか、直に計算できない。仕方なく自分の時間を答えるのだが… もしも、私の答えと異なる時間だった方々、すいません 騙すつもりはないのです。
丸山ケルンの下をS字に回り込み、扇雪渓を横目に森林帯に入ると【アサギマダラ】が飛び交う花園だ。
八方池
今日の八方池は風があるので鏡のようにとはいかないが、天狗平を越してくる風がさわやかで気持ちよい。『同じ風でも、さっきまでの稜線に吹く風とは大違いだね』
山と雲の動きを眺める静かな時間 Coffeeを点ててすごす。八方池からはトレッキングコースに入り、木道が多く敷かれる道となる。
八方池山荘
見慣れた八方尾根スキー場のトップ地だが、雪が無いので、まったく知らない場所状態。トップリフトを使わず夏のリーゼングラート・ゲレンデを下山する。この部分は登山道がある。小さい池塘の回りに花が咲く。岩岳や五竜のゲレンデも良く見える。
109レストハウス
展望レストランからもアルペンクワッド・リフトを使わず黒菱側から下りる。コンクリートの急斜面が足先を圧迫する。『Skiならあっという間なのに』
途中からリフトの下をくぐり抜け、ウサギ平ゲレンデにエスケープ。草原のウサギ平。冬は楽しいコブ斜面も歩いて直滑降はやはりつらい。『最大斜度30°だっけ?』夏草が滑りやすい。ウサギ平を横切って、さらに右の迂回コース側に回り109へ向かう。無雪時の109 水色が『ちょっとバタくさくい』 下には白馬の町が拡がる。名木山ゲレンデではパラグライダーの方々が風をさぐっている。
109で【すりおろしリンゴソフト(¥300)】を買ってお散歩。ソフトクリームの優しい甘味が美味しい。
本当は名木山を歩いて下りたかったが、五竜でおじさんが言っていたようにリーゼンスラロームコースは、まだ放牧地となっていて鉄丈網が張られている。諦めてゴンドラ・アダムに乗る。
八方
スキーシーズンでない平日の八方は静か。テコテコ歩いてBTに向かいながら、ぼっか神社で無事下山のお参りをする。
白馬駅行きのバスの時間を確認し、すぐ横の【 ♨八方第一の湯〈¥500)】に浸かる。誰も入っていない。 『ふぇ~気持ちいい』 熱めのお湯好きにはたまらない。
湯から上がると唐松小屋で会った方が入ってきた。「上で写真を撮っていて遅くなっちゃたよ」 これから車で帰るそうだ。自分は荷物を整理し、乗客独りのバスで駅に向かう。
白馬駅
【特急あずさ】の最終に合わせる 電車の待ち時間があるので駅前の食堂で蕎麦定食を食す。
北海道から来た登山の方が「大雪渓を下りてきたが、すでにガレ場の高巻き道になっていた。」と残念そう。
ローカルな大糸線 ワンマン列車って? ボタンを押さないとドアが開閉しないの? 初体験。
テント、3シーズン、シュラフ
コンロ(中カートリッジ*1)
60Lザック+Wストック=(19kg)
出発前の確認をもっと丁寧に 雨準備も怠り無く。
一日で移動できる距離が長く・早くなれば、悪天候に遭遇する確率が減り、余裕が生まれて色々なモノを見つけたり、観察もでき、スケッチの時間も作れる。
そのためには体力をつけるか、荷を軽くするかだが 体力をつけるのは… 禁煙も…
持ち物・食料は結構削っているが、最近の登山用具は軽量化が進んでいる。今のテントは2~3人用だし、コッヘルもアルミだ。少しずつ買い換えましょう
[梅雨明け10日]も最近当てにならないし、日本海に低気圧が発生する回数も増えたと思う。
今回も天気予報に振り回された感がある ラジオも必要かな。気象予報士ではないが、天気図から、もう少し天候を読めるようになりたい。
すれ違い待ちや、立ち休み時に『チュピッ』とやれる。ごくごく飲まないので飲料の量も総合的に少なくなった。(1.5L/day)
ナンダカンダ言って2日目、3日目は晴れ間に綺麗な山姿を観る時間に遭遇できたので満足。
重たい荷もトレーニングと経験だと思える。五竜山荘で一緒に待機していた地元のおじさん・おばさん 良い情報をありがとうございました。
今回、断念した白馬~親不知は来年狙います。