紅葉の尾瀬、燧ヶ岳の急登;ナデッ窪を登る。でも、ほんとうの目的は桧枝岐の新蕎麦?!
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山名/山域; 燧ヶ岳/尾瀬
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ルート; 沼山峠~尾瀬沼~ナデッ窪~燧ケ岳~熊沢田代~御池
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登山形態; 単独
- 日程; 2005/10/21(金) 日帰り
- 行程時間;8時間25分 移動時間;5時15分
- 沼山登山口 –55分– 尾瀬沼 –35分– 沼尻休憩所 –ナデッ窪;1時間30分– 燧ケ岳 -(俎嵓-柴安嵓;往復)30分 –1時間45分– 御池駐車場
※時間・数値・装備及び感想は、この山行時・個人のモノです。 あくまでも参考としてください。
檜枝岐は高速を降りてから一般道が長いが、信号少なく快適走行で尾瀬御池に着く。
満月に近く明るい夜、広い駐車場には20台位しか停まっていない。
少し仮眠して04:30起床 山食・簡単パスタの朝食を済ませた。
沼山峠 展望台
尾瀬沼は見えるが、全体的に朝霞がかかる。右に観えていた燧ヶ岳も雲で消えてしまった。 展望台からの下り、以前には無かった木道が敷かれ、大江湿原へと続いて行く。木道にはまだ霜がついていて滑りやすい。
大江湿原
湿原が放つ朝霞の中を行く。ひんやりした大気で『空気が美味しい。』 水と土、そこに暮す植物や微生物達が浄化してくれている。 時折、日が射し込み枯草原やダケカンバの葉がコンジキに輝く 『まるで、ナウシカだね。』
このあたりで稀に出現すると言う、【白い虹】は太陽が弱い為か、観れなかった。
尾瀬沼
尾瀬沼周囲も、まだ人影は少ない。気温が昇れば霞は取れるだろう。それまで尾瀬沼の周りをぶらぶらすることにしよう。
長蔵小屋からの焚火の香りに誘われる。薪ストーブで暖をとりながらCoffeeをいただく。 挽きたての【尾瀬ブレンド〈¥400〉】は美味しい。尾瀬の湧き水とあいまって、まとわるように濃い。
明後日には今シーズンの小屋閉めのため、従業員の方々はお忙しそうだ 。
焚火の香り 長蔵小屋 薪ストーブ いいな~
尾瀬沼ビジターセンタを覗いたりして暇をつぶすが、霞雲は取れない。尾瀬沼山荘近くまで行き、少し寒いが道脇の休憩所でゴロンと横になり尾瀬沼のほうに顔を向ける。
霞の中、木々からの小鳥のさえずり、水鳥が立てる波音、登山者の熊鈴が遠くで響く。
1時間ぐらいたっただろうか_太陽が高くなり、気温が上がる。尾瀬沼も霞みを出し切ったか、霞のベールが少しずつ高くなっていく。ゆっくり幕が上がるように燧ヶ岳が裾から全貌を現す。
長蔵小屋まで戻る。小屋裏から尾瀬沼に映る燧ヶ岳を観る。燧ヶ岳の頂きは、その噴火が尾瀬沼を形成したとされる火口跡のため頂部は複雑な地形だ。
幕は上がり、すっかり晴れた。カメラを向けているオジサンとともに満足。
気温もどんどん上昇。でも、秋らしく湿度は低い。
沼尻まで小さい湿原が点在する沼畔を行く。ほとんどは森の中を行くが、木陰が無い場所では日差しが強い
沼尻休憩所
『暑い~』沼尻休憩所でレインを脱ぐ。休憩所は、もう小屋閉めされているのだが、数名の方々が休憩されている。このあたりは、ハイキング感覚でのんびりできる場所だ。昨日、尾瀬ヶ原に宿泊された方々が「四回尾瀬に来て、今回が一番良い天気だ。」とうれしそうに話してくれる。
自分が進む燧ヶ岳に目を向ける。登るナデッ窪がよく見える。標高差700m弱の急登だ 。
ナデッ窪
ナデッ窪(ナデ=雪崩) 大岩がごろごろしている。斜度はさほどでも無いが、「大岩の間をぬう様に…」というよりも、跨ぎ越えて行くので腿を大きく持ち上げなければならない。カメラも縦ショットばかりになる。窪中には高い木が無いので背中からの日差しはとても秋とは思えぬほどだ。振り返えれば見おろす尾瀬沼が輝る。奥の日光白根山は漫画の富士山のような姿に見える。
オセロ岩
『あと350m』丁度、ナデッ窪の中間か、オセロのような大岩(谷側が白、山側が黒)の上で休憩。
2015mあたりで左に折れ10mほど一旦水平に行く。この先の登りは更に斜度が増す。ミノブチ岳の左を捲きながらナデッ窪の源頭部を目指して登りきる。
ナデッ窪源頭部
源頭部を乗っ越す。急登は終わりだ。やや背の高いハイマツやダケカンバが育つ[天狗の中庭]的広場を進む。おそらく火口跡なのだろう
視界が広がる。やっと俎嵓、柴安嵓の双耳峰がはっきりと見える。 長英新道からの道を交え、開放的な道を ひと登りすれば俎嵓の頂上。
燧ヶ岳 柴安嵓
俎嵓(マナイタグラ 嵓は岩の意)、尾瀬沼側から燧ヶ岳を登ると、主峰の柴安嵓には直接の道は無い。下山を御池にとると俎嵓からやや急勾配のコル道をピストンしなければならない。 ジェットコースターのように下った勢いで登れれば楽なのだが…
コルから柴安嵓を見上げると北側斜面の人を近づけない崩落地が印象的だ。
柴安嵓(シバヤスグラ) こちらが燧ヶ岳主峰。俎嵓より10m高いそうだ。燧ヶ岳頂上の石碑もこちらにある。尾瀬ヶ原の広がりの先に至仏山(シブツサン)が正面に見える。谷川岳や平ヶ岳、八海山をはじめとする越後の山々の展望が素晴らしい
燧ヶ岳 俎嵓
再び俎嵓へ。三角点と小さい祠がある頂上からは、ミノブチ岳の頂の先に尾瀬沼を見おろせる。会津駒の頂上湿原や遠く磐梯山も見える。東北らしいなだらかな山々が広がる 。
尾瀬沼方面から登ってこられたグループの方、「隊長、ここが頂上ですよね!?」 『残念!』 確かに山の形容からすると個人的には『柴安より俎嵓のほうが主峰らしい』と思う。居心地もいい。西風がやや強い。湯を沸かし【ふかひれ雑炊】とお茶を点てる。
お昼を済ませ下山開始。最初、岩場の下りはすぐに土道になる。足がかりが少なく、濡れた斜面はすべり易い。
崩落ガレ場を木道で横断した先 涸沢窪に入る。この辺は迷いやすいそうだ。 2115m・2095m二箇所がY字になっていて、それぞれ左の道へ窪から外れるように進む。無雪時は問題無いとは思うが残雪期だったり、マーキングが流されると解かりずらいのだろう。
熊沢田代
熊沢田代は好きな場所。上から見ると長く延びる木道をはさんで両脇に池塘(チトウ)。湿原の上を雲の陰が這う。 いつかは一面にワタスゲが開く熊沢田代を描いてみたい 。
田代とは湿原のこと。昔人が『田んぼのようじゃ』と思うのも無理はない
近づくと〔コン、コン、コン〕と木を削る音が聞こえる。管理の方々が木票に[↑]マークをつけていらっしゃる。こうした方々によって、我々登山者は守れれているんだなとつくづく思う 『感謝』
東側正面には平ヶ岳がドーン 西側の池塘には雲が映る ポカポカ陽気でいい気持ち。
管理の方々から聞いた話によると、尾瀬も今年は紅葉が冴えず、茶枯れが目立つそうだ。池塘から軽く登り、左にカーブするあたりで振り返る。陽を背にした燧ヶ岳がまぶしい。
小さい湿地の先は涸沢窪の急下りでウエットな森中を行く。所々に新しく立派な木階段が架けられている。
広沢田代
広沢田代には小さな池塘が点在する。熊沢田代のように広がる空間ではなく森が近い。
広沢田代の先も蛇行する涸沢窪の急下り。暗い森中は、苔つきの大石やぬかるみが多い。名無しの登山道、広い湿原を少し急な斜面で結んでいる。登るのは意外と大変だろう。『無雪時の登り下りだけなら、斜度も距離もナデッ窪の方が楽く』だと思う。
日当たりの良い場所のカエデは綺麗に色づく。斜度が緩んだ森を抜けて広沢田代林道に出れば、駐車場はすぐそこだ。
朝、バスに乗り込んだ駐車場に戻る。車は少し増えた程度でガラガラ。昼間見ると山より駐車場周辺や、桧枝岐への山道の紅葉が一番色づいていたようだった…
桧枝岐
檜枝岐に降りて【丸屋】で目当ての新蕎麦を頂く。 ほんとに檜枝岐の裁ちそばはおいしい。十割なのにツルツル・シコシコ 江戸っ子は「蕎麦は喉で味わう」と言うが、ここの裁ちそばは舌でも十分に堪能できる。 蕎麦の香りとチョット野趣な風味が口から鼻そして喉につたわり広がる 【はっとう】もいける。
村営【♨駒の湯】に浸かる。露天から川をはさんで少し色づいた谷を見ながら 『ほげ~』 アルカリ単純泉の湯はお肌をすっきり、スベスベにしてくれる。谷間の村の夕暮れは早い。湯から上がると4時だというのに、もう薄暗い。家路に着く地元の子供たちが、自転車をこぎながら「こんちは~」と声をかけてくれる。平家の隠れ里も、スパやスキー場で垢抜けた観光地。これも時代の流れか_ 単車旅の皆と初めてここを訪れた昔、村人の態度が閉鎖的だったことが今となっては懐かしい。
夕方の帰路、内川のT字路辺りからは大型トラックが多くなった。
コンロ(中カートリッジ*1)、ツエルトシート
15Lザック(5kg)
これは自分の力ではどうしようもないのだが、行く前にあまり『期待』しすぎるとダメ。山は山 一期一会なのだから
尾瀬の道、以前より木道や木段が整備された。半世紀前には木道すら無かったという尾瀬。登山者が訪れる→山や湿原がダメージ→木道が多くなる→歩きやすくなり、さらに数多くの人々が訪れる。 [ 山を愛するなら、山に行かない事が一番? ] 原生の山を愛した深田久弥、その【百名山】によって山を変えてしまう現状。自分を含め、いたしかたがないことなのか。
尾瀬はラムサール条約の候補地だ。日光からは独立した国立公園・自然遺産を目指していくという。どうか 昔人~旅人達が初めて峠を越え、目の前に広がったモノを伝え残してほしい。そして尾瀬とそこを訪れる人を守る数多くの方々がいらっしゃることを忘れないように。《2005年11年 尾瀬はラムサール条約湿地に登録されました。》
ホントに檜枝岐の蕎麦はおいしい。檜枝岐には村歌舞伎がある 次回はその時期に訪れてみましょう。